概日リズム制御因子であるBMAL1とREV-EEBaはフラビウイルスの感染を制御する
論文のリンク
https://www.nature.com/articles/s41467-019-08299-7
ヒトから植物に至るまで、遍く生物には「概日リズム」という24時間周期の生体時計が備わっており、免疫や代謝といったあらゆる生理的機能の活性を摂動させている。
概日リズムの周期は、CLOCKやBMAL1といった「circadian clock components 」と総称されるタンパク質たちが下流遺伝子の発現を制御することで作り出すことが知られている。
2017年のノーベル医学賞にもなった概日リズム。近年とってもホットな領域ですが、概日リズムとウイルス感染の関連はこの論文がお初らしいです。なんか意外。
この論文のポイントとしては、
- 時計分子であるBMAL1とERBaがフラビウイルス科に属するヒト肝炎C型ウイルス (HCV) やデングウイルスを抑制することを発見!
- これには、接着因子や脂質代謝など、様々なパスウェイが背景にあることを発見!
- ERBaのアゴニストによってフラビウイルスの感染をコントロール出来ることを発見!
などが挙げられます。特に3は、最近のウイルス学分野の論文でよく見る展開ですね。「この現象は新しい治療法のターゲットにもなり得るから、臨床医学的にも大事だぜ」という。
個人的に気になることとしては、HCV感染や脂質代謝を制御するmiR122には敢えてあまり突っ込まず、どころかfig7のGraphical abstractからもオミットしちゃってる点でしょうか。新しい現象を見つけた時、その分子機構が既知のものならインパクトが下がっちゃう気がするのでクレバーな判断なのかもしれませんが…
まぁそれでも、マイルストーン的なスゴイロンブンである事は間違いないと思います。近いうち、ウイルス学でのディスカッションにおいて、「アッセイした時間」が重要になるのかも知れないですね。そうなったら学生は死にますが…