ひび、これ、しんか

ニワカオタクな理系院生の雑記

映画 ジョーカー感想

以下、ネタバレを含みます。

 

ツイッターとかで評判なっていたので、映画「ジョーカー」を見た。

総評として、めちゃくちゃ面白かった。と同時に、人間のモラルの薄っぺらさを実感させられるサイコホラー的な怖さもすごく感じた。

 

ジョーカーは、バットマンシリーズのヴィランである。

他のアメコミシリーズによくあるスーパーパワーなどは持っておらず、持ち前の頭脳によって破壊殺戮を繰り返す。

この映画は、コメディアン志望の中年男性であるアーサーが自らの境遇に絶望し、ジョーカーとして覚醒するまでの経緯を描いている。

 

この映画は本当によくできている。

巧妙に、緻密に、(おそらく)幾分かの悪意をもって組み立てられた構成だ。

 

この映画の終盤までは、アーサーの孤独感に溢れる惨めな私生活を繊細に、じっくりと描いている。

この時点で、否応無しにアーサーに感情移入させられる。自分が生活の中で孤独感じる瞬間を、映画の中に投影せざるを得なくなってしまっていた。

 

そしてついに映画終盤、アーサーは自らの憧れであったコメディアンと問答をやりとりした後、生放送中に銃殺することで完全に覚醒する。

その問答の中で、殺戮を働く意義を声高に唱えるアーサーに対してコメディアンが反論してるのだけど、それが見事なまでの正論で、このシーンで如何にアーサーの動機が幼稚で身勝手なものかを改めて実感させられる。

 

明らかにアーサーに大義は無い。アンチヒーローですら無い。動機は八つ当たりに近いとすら思う。

だけど、アーサーが憧れのコメディアンを撃った瞬間、自分はなぜかカタルシスを感じている。

同時に、自分が日頃抱えているモラルが如何に薄っぺらくてグラつきやすいのかに気づく。

今の平穏な日常は、自分の周りの人がモラルを持ち、アーサーが行なった様な凶行に走らないから成り立っているけれど、そのモラルは二時間の映画でグラつくくらいに脆い。

薄氷の上に成り立っている。

そんなことをまた考えて、映画見てる間隣の人がいきなり暴れ出したらどうしようとか心配し出しちゃう。

 

また、ヴィランヴィランのまま描ききった点についても素晴らしいと思いました。

この間の「ヴェノム」では、ヴェノムをあたかもアンチヒーローみたいに扱ってて少しガッカリしたので…

 

そんな感じで、めちゃくちゃ黒くて重いモヤモヤを残してくれる映画でした。

終わった後、シアターから出て行く人みんなほぼ無言なんて初めて見たかもしれん。

胸糞大好きな自分としては百点。