ひび、これ、しんか

ニワカオタクな理系院生の雑記

注射型エネルギー非依存性ナノアンテナは、哺乳類に近赤外線の視野を付与する

リンク

https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(19)30101-1?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867419301011%3Fshowall%3Dtrue

https://m.youtube.com/watch?v=_8SjeKEcp9I

 

 

概要

哺乳類がものを見るとき、網膜上の桿体細胞が可視光線を感知して反応することによって光刺激の情報が視神経に送られる。

桿体細胞が光を感知する際、”Outer segment”に豊富に存在するロドプシン(オプシンというタンパク質とレチナールという化合物の複合体)が光子のエネルギーによって構造を変化させる必要がある。

赤外線は、可視光線よりも長波長の(=エネルギー量が小さい)光なので、ロドプシンの構造変化は起きない。

なので我々哺乳類の目は赤外線を感知する事は出来ないのだ。

 

筆者らは、赤外線によって励起され、可視光線を放出するナノマテリアルを開発し、さらにこれを光受容体保持リンカーを付与した。

このナノマテリアルをマウスの網膜上に注射したところ、顕著な副作用も無く、2ヶ月以上安定して網膜に定着した。

さらに、行動学試験などにより、ナノマテリアル注射を受けたマウスは、近赤外線を感知することができ、さらに近赤外線で描出された複雑なパターンも認識することができた。

 

 

感想

 

「未来かよ…」というのが率直な感想。

攻殻機動隊とか虐殺器官とかにいかにも出てきそうなSFの世界の技術が論文として発表されている、という衝撃。

 

彼らは軍用技術への活用に意欲的な様で、アブストラクトの項を「今回我々が開発した近赤外線視野を付与する技術は、一般的市民向けのアプリケーションから軍事用途まで、あらゆる方法で活用できるぜ」と結んでいます。

ここまであけっぴろげに軍事転用への可能性を明言した記述あんま見たことなかったので、カルチャーショックでした。

 

今回彼らは桿体細胞にナノマテリアルを保持する技術から開発したわけで、この発表が視野操作技術の発展に与える寄与は大きそうですね。最近ではips細胞由来角膜組織の移植を成功させていますし、視覚障害一般が治療可能になる未来がすぐそこまで来てる気がします。未来…